連携講座「池袋学」<春季> 開催レポート

杉田 光平 さん(文学部文学科日本文学専修3年次)

2016/07/01

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OVERVIEW

講演会の様子をお届けします。

「あわい(間)の街としての池袋、そして池袋モンパルナス —社会心理学からの考察—」

東京芸術劇場×立教大学 連携講座「池袋学」<春季>
日時 2016年5月21日(土)14:00~16:00
会場 東京芸術劇場 5F シンフォニースペース
講演者 押見 輝男 (本学名誉教授、元総長)
 

講演会レポート

東京芸術劇場と立教大学の連携講座「池袋学」。三年目を迎えた二〇一六年度第一回である本講座では、立教大学第十七代総長であり、新池袋モンパルナスまちかど回遊美術館を立ち上げた一人である押見輝男氏に講師としてお越しいただき、「あわい(間)」の街としての池袋、そして池袋モンパルナスについて、社会心理学からの考察を踏まえてお話しいただきました。

池袋モンパルナスとは大正の終わりごろから終戦ごろにかけて、池袋やその周辺に存在したいくつものアトリエ村、さらにはその芸術活動および文化も指す呼称であり、詩人の小熊秀雄が言い出したものとされています。そして「あわい(間)」というのは心(自己)と意識の外(他者)の「間」に位置する、物事を客観的に見ることが出来る不即不離、中庸の空間、機能、状態です。
池袋モンパルナスはまさに「あわい(間)」の空間でした。アトリエ村の芸術家たちは売れなくても作品制作に打ち込み、夜になれば多くの者が池袋の街で安い酒を飲んだり遊んだりして、奔放な日常生活を送っていました。また、通常集団というものは集団同士の対立や派閥争いというものが存在しますが、いくつか存在するアトリエ村同士での対立はなく、異質なもの同士が出会い、対等に交流しお互いの自己実現を促し合う、境界が曖昧な「ゆるい集団」でした。この「ゆるさ」が通常の集団とは一線を画す要因となったものと思われます。そして、アトリエ村の多くの者は政治には無関心で、戦争に対して抵抗もせず服従もしない、すなわち声をあげぬ抵抗をしていました。これは「あわい(間)」の思想が彼らにあったからこそできたのであり、パリに憧れを持っていたという彼らは日本に対する「あわい(間)」がとれていたと言えるでしょう。
「あわい(間)」の空間としての池袋モンパルナスは現在の池袋へと受け継がれています。渋谷や新宿といった街とは違い、池袋という街は捉えどころのない曖昧な街です。田舎と都心の境、山の手と下町の狭間、サブカルチャーとハイカルチャーが同時に存在している「あわい(間)の街」です。押見氏は池袋のことを「どれが本当の顔なのか自分でさえも分からない、まさに『怪人二十面相のような街』であり、それぞれの思いが集まり、達成しては帰って行く、それゆえに消滅可能性都市となり、消滅してしまうことも道理である。これこそが池袋モンパルナス、池袋という風土が産んだ産物である」と述べていました。
この「あわい(間)」という思想は現代においても重要であると思われます。白黒はっきりさせることも大切ですが、そこに第三の「あわい間」の選択肢があっても良いのではないでしょうか。東京には、渋谷や原宿などのおしゃれな街や、それに対して、秋葉原や中野などの個性的な街がありますが、そのあわい(間)に境界線の曖昧な都市として池袋が存在することは、多様性を許容する意味で、重要な役割を果てしているのではないでしょうか。そして、さまざまな要素が混在している場所だからこそ、かえって地方から出てくる人には都合が良いでしょう。また、近年では海外からも多くの人が訪れます。そういった外部からの訪問者に対してはむしろ適している街と言えるでしょう。消滅可能性都市と言われていますが、外部の人物を受け入れ、街を活性化し続ければ消滅という事態にはならないのではないでしょうか。それどころかさまざまな目的を持った人が集まる街という、新たな都市の在り方として「あわい(間)の街」池袋は成立しています。押見氏も「第二、第三の池袋モンパルナスをこれから作っていくことができれば、池袋はさらなる発展を遂げるでしょう」と池袋のもつポテンシャルを示唆しました。「あわい(間)」の思想とともに、今後の池袋という街に対しさらなる希望を見出すことができました。

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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